「柔軟性」の5つのチェックポイント
「毎日ストレッチしているのに、なかなか身体が柔らかくならない」
「右は開脚できるのに、左は開かない」
「脚は上がるけれど、腰が反ってしまう」
バレエや新体操、チア、ダンスなどを頑張るお子さんでは、こうした悩みを抱えていることがあります。
一生懸命ストレッチをしているのに変化がないと、
「もっと時間をかけて伸ばした方がいいのかな?」
「もっと強く伸ばさないとダメなのかな?」と考えてしまいますよね。
しかし、「身体が硬い」という結果だけを見て、ストレッチを増やすことが必ずしも正解とは限りません。
なぜなら、「突っ張る」「脚が上がらない」「開脚しにくい」という状態があっても
その背景は一人ひとり違うからです。
今回は、ストレッチを始める前に確認したい、身体の5つのポイントについて解説します。
①本当に「筋肉」が硬い?
まず確認したいのが、
「その突っ張りは、本当に筋肉の硬さなのか?」ということです。
身体の可動域は、筋肉だけで決まるわけではありません。
関節の構造や関節包、靭帯、神経組織の状態など、さまざまな要素が関係しています。
そのため、
「前屈でここまでしか届かない」
↓
「だから、もも裏が硬い」
↓
「もっともも裏を伸ばそう」
と、手がつかない、もも裏のつっぱり感という
結果だけから原因を決めつけることはできません。
もちろん、筋肉の柔軟性を高めることが必要な場合もあります。
ただし、原因が違えば、必要なアプローチも変わります。
「硬いから伸ばす」ではなく、「なぜ硬く感じるのか?」を考えることが、最初の一歩です。
② 骨盤は動かさない!のではなく「どう動かすか」
ここは、競技動作を考える上で、とても重要なポイントです。
骨盤は、いつでも動かさずに固定しておけばいいわけではありません。
むしろ、競技動作では股関節と骨盤が協調して動くことが必要になります。
例えば、
バレエで脚を前に高く上げるデヴァンでは、脚の挙上に伴って骨盤が後傾方向へ動くことがあります。
スプリッツで前脚方向へ上体を倒していく場面では、骨盤を適切に前傾させながら股関節を動かしていくことが必要です。
つまり、「骨盤が動く=悪い」ではありません。
大切なのは、その動作に必要な方向へ、股関節と骨盤が協調して動けているかということです。
そして、この協調がうまくいかないと、本来必要な動きを別の場所で補おうとすることがあります。
その代表的なものが、次の「腰による代償」です。
③ 「腰」で代償していない?
「脚が高く上がる」「身体が大きく反れる」
これだけを見ると、
「股関節が柔らかい」「身体が柔らかい」と思ってしまうかもしれません。
しかし、実際には股関節の動きが足りない分を、腰や骨盤の動きで補っている場合があります。
例えば、デヴァンで脚を高く上げるとき、
股関節の動きだけでは足りない分を、腰を大きく反らせることで補えば、見た目には脚が高く上がっているように見えることがあります。
これは、「股関節の可動域が大きい」ことと同じではありません。
また、スプリッツなどでも、骨盤や脊柱の動きを適切に使うことは必要ですが、本来必要な股関節の動きが十分でないまま、腰や背骨の動きばかりで深く見せてしまうことがあります。
だからこそ、骨盤や背骨が動いているかどうかだけを見るのではなく、どこがどのように動いているのかを見ることが大切です。
「柔らかく見える」ことと、「必要な関節を使って動いている」ことは、同じではありません。
④ 左右差は、どこから来ている?
例えば、
「右の開脚はできるのに、左は行きにくい」
「右脚は高く上がるのに、左は上がらない」という左右差。
このとき、「左の筋肉が硬いから、左だけもっと伸ばそう」
と考えてしまいがちです。
しかし、左右差は筋肉の柔軟性だけで生まれるとは限りません。
例えば、
- 骨盤や股関節の動かし方
- 軸足で身体を支える力
- 左右の身体の使い方
- 股関節と骨盤の協調
- 代償動作の出方
などが左右で異なることで、動かしやすさに差が出ることがあります。
つまり、
「右は柔らかい、左は硬い」という結果だけではなく、
「右と左で、身体をどう使っているのか」まで見る必要があります。
硬い側だけを無理に伸ばすのではなく、左右で何が違うのかを確認する。
それが、左右差を考えるうえで大切な視点です。
⑤ そもそも、その競技に必要な可動域は足りている?
そして最後に確認したいのが、
「本当にどこまでの柔軟性が必要なのか?」ということです。
バレエ、新体操、チア、ダンスなど、柔軟性が求められる競技でも、必要な動きや使う場面は同じではありません。
さらに、同じ競技をしていても、身体の状態や取り組んでいる技によって必要な可動域は異なります。
だから、「180°開脚できるまで、とにかく伸ばす」
という一律の目標だけで考えるのではなく、
その競技・その動作で、本当に必要な可動域があるのか
を考えることが大切です。
必要以上に可動域だけを追い求めるのではなく、
必要な可動域を確保したうえで、それを支え、コントロールして使えること。
ここまで考えて、初めて「競技で使える柔軟性」につながります。
「もっと伸ばす」前に、まず身体を見てみる
ここまで5つのポイントを紹介しました。
① 本当に筋肉が硬い?
② 骨盤と股関節は協調できている?
③ 腰で代償していない?
④ 左右で何が違う?
⑤ 競技に必要な可動域は足りている?
これらを見ていくと、
「身体が硬いから、もっとストレッチしよう」だけでは、お子さんの身体を十分に理解できないことが分かります。
同じ「脚が上がらない」という悩みでも、
筋肉の柔軟性が課題なのか、
股関節と骨盤の協調が課題なのか、
腰などの代償が起きているのか、
左右の使い方に違いがあるのか。
原因が違えば、考えるべきアプローチも変わります。
だからこそ私は、
「どれくらい柔らかいか」だけではなく、
「どうやってその動きを作っているのか」を大切にしています。
柔軟性は必要。でも「伸ばすだけ」ではありません
「柔軟性はいらない」と言っているわけではありません。
競技に必要な可動域は、絶対に大事なことです。
ただし、
必要な可動域を獲得することと、
その可動域を競技の中で使えることは別の話です。
床の上で180°開脚できても、立位で脚を上げたときに身体を支えられなければ、
その可動域を競技の中で十分に活かせないことがあります。
だからこそ、可動域・安定性・コントロール。
この3つを、その子の身体と競技動作に合わせて考えることが大切です。
まとめ
「毎日ストレッチしているのに変わらない」
そんなときは、努力が足りないのではなく、
今の身体に必要なことと、行っていることが合っていない可能性があります。
大切なのは、もっと頑張ることではありません。
まず、「今、身体のどこが動いていて、どこで支えていて、どこで代償しているのか」を知ること。
そして、その子の競技に必要な可動域を確認し、
必要な柔軟性を、安定性とコントロールにつなげていくこと。
それが、柔軟性を「ただ柔らかい」から「競技で使える」へ変えていくための一歩です。
「うちの子は、どこを伸ばせばいいんだろう?」
「毎日ストレッチしているのに、なぜ変わらないんだろう?」
そう感じている方は、まず一度、お子さんの身体の「現在地」を確認してみてください。
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