自宅でピラティスや体幹トレーニングを行う人が増えています。
一方で、一生懸命やっているのに
「首が太くなった気がする」
「翌日に腰が痛くなる」などなど
その原因は、運動量ではなく、運動の質(コントロール)に原因があるかもしれません。
運動制御学では、本来使うべき筋肉が働かないとき、
他の部位が身代わりに動く「代償動作(Compensatory movement)」という現象が確認されています。
いわば、お腹のサボりを首や腰が「肩代わり」している状態です。
回数より重要なのは「コントロール」
運動学習理論では
正確な動作の反復が学習を形成する
出典:Schmidt & Lee Motor Control and Learning
と定義されています。
誤った動きの反復は、誤った運動パターンの学習につながります。
つまり、
「きつい=効いている」
「回数をこなした=正しい」 とは定義されていません。
自己流チェックで見るべき5つのポイント
① 耳と肩の距離(頚部の代償)
ロールアップなどで喉元が詰まる感じや、顎が先に突き出る感覚はありませんか?
動作中に耳と肩が近づく場合、頸部(首周り)主導の代償動作が発生している可能性があります。
脳が体幹(腹筋)の使い方を忘れていると、最も動かしやすい首の筋肉(胸鎖乳突筋など)を過剰に使って頭を持ち上げようとします。
「ここが整うと、運動後のひどい肩こりから解放されます。」
首周りに「スペース」ができると、デコルテラインがスッキリし、巻き肩の改善にもつながります。
② 肋骨の前方突出(リブフレア)
仰向けで寝た時、床と背中の間に大きな隙間があったり、アンダーバストがボコッと浮いていませんか?
腹部トレーニング中に肋骨が前へ開く場合、腹圧コントロールより胸郭挙上で代替している状態です。
広背筋の硬さや腹斜筋の弱さが原因です。肋骨が浮くと腹圧が逃げ、せっかくの腹筋運動が「腰を反らせる負荷」に変わってしまいます。
肋骨が正しい位置に収まると、ウエストのくびれが引き締まり、呼吸も深くなります。
③ 腰の反り(運動連鎖の破綻)
「足を下ろしていく時に、腰が床から離れまいと必死に耐えて、お腹より前ももがパンパンになっていませんか?」
脚上げ・腹筋動作で腰椎が反る場合、股関節主導動作へ置き換わっています。
足の重さは体幹にとって大きな負荷(レバーアームの延長)です。腹部で支えきれないと、股関節屈筋(前もも)が過剰に働き、腰椎を前方へ引っ張ってしまいます。
「腰を反らさないことで、初めてお腹の深層(インナー)にスイッチが入ります。」
腰の反りが消えると、前ももの張りがスッキリし、脚のラインが整います。
④ 呼吸停止(安定性の低下)
「キツいと感じた瞬間、無意識に息を止めて、顔が赤くなっていませんか?」
動作中の呼吸停止は運動制御の安定性低下と関連します。
「息を止める=脳のパニック」の状態です。息を止めて固める(バルサルバ現象)のは、インナーユニットで体を支えられない時の「緊急避難的な固定」です。これではしなやかな動きの学習は進みません。
呼吸は体幹安定の構成要素です。動きと呼吸が連動すると、自律神経が整い、運動後の疲労感が心地よいものに変わります。
⑤ 動作スピード(神経筋コントロール)
「勢いをつけて『えいっ!』と動いていませんか? その速さは、苦手な動きを飛び越える『ごまかし』かもしれません。」反動や勢いを使う場合、神経筋コントロール評価が困難になります。
速い動きは慣性(勢い)に頼るため、筋肉が正しく伸び縮みする「感覚のフィードバック」が脳に届きにくいです。
ゆっくりでの制御が、脳の地図(身体図式)を効率よく書き換えます。
スピードをコントロールできるようになると、日常生活のふとした動作(階段や立ち座り)まで軽やかになります。
なぜ「感覚だけ」ではズレるのか
脳には、自分の身体が今どこにあって、どう動いているかをリアルタイムで把握する
「身体図式(ボディスキーマ)」という仕組みがあります。
いわば脳の中にある「自分の体の地図」です。
しかし、長年のデスクワークや運動不足によって、
この地図は次第に古くなり、ぼやけてしまいます。
例えば、
ピラティスで「背骨を一つずつ動かして」という指示が出たとき。
地図が曖昧な脳には、背中が「一枚の板」のように登録されています。
動かすべきポイントが地図に載っていないため、どこをどう動かせばいいか分からず、
結果として「動きやすい場所(首や腰)」を振り回して代償してしまうのです。
このように
「脳の指令(地図)」と「実際の動き」には、
無意識のうちに大きなズレが生じます。
「できている感覚」はあっても「実際の動作」は伴っていない。
この感覚の空白こそが、自己流で効果が出ない最大の原因です。

マシンピラティスの役割(運動学習の観点)
マシンピラティスでは、
バネ抵抗・可動軌道・サポートが存在します。
これらは運動学習理論でいう外部フィードバックに該当します。
マシンのバネや軌道は、脳にとっての「ガイド(外部フィードバック)」です。
目隠しで綱渡りをするような自己流の動きに対し、
マシンは「脳内の地図(身体図式)」のバグを修正し、正解のルートを教えてくれる装置になります。
評価が必要な理由
関節運動や神経系による制御、姿勢保持の仕組みを詳しく分析することで、
あなたの不調が「代償動作」なのか、「コントロール不足」なのか、あるいは「関節の可動性の過多・不足」なのか、
その真実の原因を見極めることができるからです。
原因が明確になることで、「今のあなた」に最も必要な最短ルートのアプローチが見つかります。
例えば、同じ「腰が反る」という悩みでも……
- 原因A(可動性の不足) : 背中が硬すぎて、腰で動くしかない。
- 原因B(コントロール不足): 筋肉はあるのに、脳が使い方の指令を忘れている。
- 原因C(神経系制御) : 足の重さに対して、体幹を固めるタイミングがズレている。
これらを区別せずに動くのは、原因不明のまま適当に薬を飲むようなもの。
だからこそ、最初の「評価」が体を変える鍵になります。
自己流で続ける前に確認してください
以下に1つでも当てはまる場合:
- 首が疲れる
- 腰がつらい
- 効いている場所が分からない
- フォームに自信がない
評価を受けることが推奨されます。※効果保証・医学的診断ではありません
当スタジオでは理学療法評価をベースにマシンピラティス指導を行っています。
フォームチェックと動作評価を体験レッスンで実施しています。
「なぜできないのか」は人それぞれ。関節の硬さなのか、神経の通り道(制御)の問題なのか。
あなたの「代償動作のクセ」を紐解きます。

